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省力化投資補助金(一般型)第8回の変更点|「基準年度」の見直しが意味すること

中小企業省力化投資補助金(一般型)の第8回公募要領が、2026年8月18日に公開されました。9月中旬に申請受付が始まり、10月中旬に締切、採択発表は2027年2月上旬の予定です。省力化投資補助金の申請を準備している方にとって、今回の変更点の把握は待ったなしの状況です。

第8回では、表記の整理から審査の根幹に関わるものまで、いくつかの変更が入りました。この記事では、実務に本当に影響する変更に絞って解説します。なかでも最重要なのが、成果指標を測る起点となる「基準年度」の見直しです。ここを見落とすと、事業計画書の数値設計そのものがずれてしまいます。

目次

省力化投資補助金 第8回の最重要変更|「基準年度」が事業完了年度に

今回、最も大きな変更は、成果指標を測る比較の起点が「応募申請時」から「基準年度」に統一されたことです。そして、その「基準年度」の定義自体が変わりました。

第7回までは、基準年度は「応募申請時の直近の決算期」でした。第8回では、これが「補助事業が完了した日を含む事業年度の決算期」に変わっています。つまり、成果を測るスタート地点が、申請の時点から、事業を終えた後の時点へと後ろ倒しになったのです。

この見直しに連動して、成果指標の要件がすべて「基準年度と比較して」という書き方に置き換わりました。具体的には、労働生産性の年平均成長率が4.0%以上、1人当たり給与支給総額の年平均成長率が3.5%以上、そして付加価値額の増加、という目標を、新しい基準年度を起点に測ることになります。

なぜ「基準年度」の変更が実務で重要なのか

この変更が厄介なのは、成長率(CAGR=年平均成長率)を計算するときの「分母」がずれるからです。

成長率は、ある起点の数値を分母に、そこからどれだけ伸びたかで計算します。その起点=基準年度が後ろ倒しになったということは、過去の公募回で作ったひな型の数値をそのまま流用すると、成長率の計算基準が合わなくなるということです。第7回で申請を準備していた案件を第8回で出し直す場合、事業計画書の数値設計を組み直す必要が出てきます。

言い換えれば、成果を測る「発射台」が上がったのです。事業を終えた後の、すでに一段高くなった数値を起点に、そこからさらに賃上げや生産性向上を求められる。従来より、達成のハードルが実質的に引き上げられたと捉えるのが妥当です。

「足下の賃上げ」が審査で新たに問われる

もう一つ、審査に関わる重要な追加があります。第8回では「足下の賃上げ」を評価する記述が新たに加わりました。

具体的には、応募申請の直近決算期から基準年度までの給与総額の上昇率が、物価上昇率を下回る計画は「審査上大幅に不利になる」と明記されました。つまり、物価高に賃上げが追いついていない計画は、それだけで採択の土俵で不利になるということです。

さらにこの足下の賃上げは、採択後から交付決定までの間に従業員へ表明することが必須とされ、期間中の実績もモニタリングの対象になります。計画上の数字だけでなく、実際に賃上げを従業員へ約束し、実行しているかまで見られる仕組みです。

国が、補助金を通じて企業により強く賃上げを促そうとしている。今回の変更の背景には、その明確なメッセージが読み取れます。

スケジュール・要件の厳格化もあわせて確認

そのほか、実務に影響する変更を押さえておきます。

補助事業の実施期間が1か月短縮されました。交付決定日から18か月以内(採択発表日から20か月以内)だったものが、17か月以内(採択発表日から19か月以内)になっています。事業のスケジュールに、以前より余裕がなくなった点は注意が必要です。

失格・対象外の要件も厳格化されました。採択された後であっても対象外に該当すれば取り消される場合があると明文化され、過去1年に労働関係法令違反で送検処分を受けた事業者が対象外要件に追加されました。口頭審査で連絡がつかず日程調整できない場合は、申請辞退とみなして不採択とする記述も加わっています。

加点基準の数値も更新されました。事業場内最低賃金の加点は、比較時点が2026年6月に、全国目安が55円以上に改められています。

見落とせない論点|補助金の「返還」要件

制度を正しく理解するうえで、採択後に起こりうる「返還」の要件も押さえておく必要があります。返還は大きく、成果目標が未達だった場合と、不正・違反があった場合の2系統に分かれます。

このうち、通常の事業運営でも起こりうるのが、賃上げ等の成果目標が未達だったときの返還です。事業計画期間の終了時点で、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上という目標に届かなかった場合、達成率に応じて返還を求められます。達成率は、実際に達成した成長率を、申請時に掲げた目標値で割って算出し、成長率がゼロまたはマイナスなら全額返還です。事業場内最低賃金の引き上げ要件が未達の場合も、1年分に相当する額の返還が生じます。

前述の「基準年度が事業完了年度に変わった」変更は、この返還判定にも直結します。返還額を左右する達成率の計算基準そのものが、第7回とは変わっているからです。

ただし、返還が免除されるケースもある

一方で、成果目標が未達でも返還を求められない、免除のケースも定められています。

まず、再生事業者は、成果未達による返還要件そのものが免除されます。

そして、それ以外の事業者でも、「事業者の責めに帰さない理由」があれば返還は求められません。具体的には、付加価値額が増えておらず、かつ企業全体として営業利益が赤字である場合です。この2つを同時に満たす必要があり、どちらか片方だけでは免除されません。あるいは、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合も対象です。

これは、「賃上げに向けて努力したが、外部環境で業績が伴わなかった。それなのに返還を求めるのは酷だ」という趣旨の救済と読めます。逆に言えば、付加価値が増えている、または黒字なのに賃上げ目標に届かなかった場合は、免除されません。なお、虚偽申請などの不正・違反による返還や、大幅賃上げ特例の未達による差額返還は、この免除の対象外です。

制度が突きつける、経営者への問い

ここまで見てきたように、第8回の変更は、企業により厳しい選択を求めるものになっています。発射台が上がった基準年度、物価上昇率を上回る賃上げの要求、未達なら返還というリスク。補助金を活用するなら、相応の賃上げをやり切る覚悟が要る制度設計です。

ここで一つ、当事者として感じることを書いておきます。物価高で苦しんでいるのは、生活者だけではありません。経営者もまた、同じように苦しい。仕入れは上がり、人件費も上げなければ人は集まらない。それでも価格に転嫁できなければ、事業そのものが立ち行かなくなる。賃上げは「やりたくない」のではなく、「原資をどう作るか」という切実な問いなのです。

だからこそ、省力化投資という選択肢には意味があります。人手のかかる工程を機械に任せ、同じ人数でより多くの付加価値を生む。それができれば、賃上げの原資も、価格競争から抜け出す力も、少しずつ生まれてきます。補助金の賃上げ要件は、厳しいノルマであると同時に、「そこへ向かうための投資を、今こそやろう」という後押しでもあるのだと、私は捉えています。

第8回の申請を検討している方へ

第8回は、基準年度の見直しによって数値設計の考え方が変わり、事業計画書の作り込みが従来以上に重要になりました。過去回のひな型をそのまま流用できない以上、制度の意図を正しく踏まえた計画づくりが、採択の分かれ目になります。

省力化投資補助金(一般型)の対象設備の考え方から、賃上げ計画の数値設計、採択後の実績報告・入金までの流れは、こちらのページで詳しく解説しています。申請を検討されている方は、あわせてご覧ください。

→ [省力化投資補助金(一般型)サポートページ]


※本記事は2026年8月時点の第8回公募要領および中小企業庁の公表情報に基づいています。制度の細部、特に「足下の賃上げ」の判定方法など運用面は、応募申請の手引きや事務局への確認が必要になる場合があります。最新の要件は公募要領の原文をご確認ください。

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