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デジタル化・AI導入補助金、創業まもない会社がつまずく「給与支給総額ゼロ」の罠

補助金の支援をしていて、危うく見落とされがちな落とし穴に、支援先の申請準備の段階で気づきました。放っておけば、時間をかけて事業計画を作り込んだあげく、入り口で門前払いになっていたケースです。

デジタル化・AI導入補助金には、創業まもない企業ほどはまりやすい、見えにくい罠があります。しかもそれは、事業内容や製品の問題ではなく、「申請する事業者が、そもそも要件の土台に乗れるか」という、もっと手前の話です。今回は、その罠の正体と、なぜ入り口での確認が決定的に重要なのかを、実際の支援現場からお伝えします。

目次

「賃上げは加点」——その理解だけでは足りない

いまの補助金には、国から企業へ「給与を上げていってほしい」という強いメッセージが込められています。前回の省力化投資補助金の記事でも触れたとおりです。デジタル化・AI導入補助金も同じで、賃上げへの取り組みが審査に関わってきます。

ここで注意したいのが、「賃上げは加点だから、なくても申請はできる」という理解だけでは足りない、という点です。確かに、賃上げが加点として働く場面はあります。しかし、補助を受ける金額帯によっては、賃上げは加点ではなく、満たさなければ申請できない必須要件に変わります。

そして、その賃上げ要件を満たせるかどうかを判定する土台に、多くの人が見落とす仕組みが潜んでいます。

賃上げの比較ベースは「1年間働いている人」

賃上げ要件は、1人当たりの給与支給総額を、事業計画期間でどれだけ伸ばせるかで判定されます。伸び率を測るには、出発点となる「今の給与支給総額」が必要です。

このとき比較のベースになるのは、1年間(12か月)を通じて働いている従業員です。年の途中で入った中途採用者や、途中で辞めた退職者は、この計算のベースに含めなくてよい仕組みになっています。丸1年在籍している人を基準に、給与がどう上がっていくかを見る、というわけです。

制度としては合理的です。問題は、この「1年間働いている人」が、支援先には一人もいなかったことでした。

給与支給総額が「ゼロ」になるケースがある

支援先は、創業して間もない企業でした。設立から日が浅く、1年を通じて在籍している従業員が、まだいなかったのです。

さらに、もう一つが重なりました。その会社では、役員報酬を受け取っていませんでした。創業当初、会社にお金を残すために社長自身が役員報酬をゼロにしておく——これは、決して珍しいことではありません。むしろ、創業期の堅実な経営判断として、よくある話です。

ところが、ここに落とし穴があります。給与支給総額には、従業員への給与を記載、従業員がいない場合は役員報酬も記載していいとなってます。1年在籍の従業員がおらず、役員報酬もゼロ。すると、比較のベースになる給与支給総額が、まるごとゼロになってしまうのです。

そして、申請の様式には、この給与支給総額にゼロを入れることができません。ゼロを前提にした賃上げ計画は、そもそも成り立たない。つまり、この状態では申請の土俵にすら上がれない、ということになります。

入り口で気づけば、無駄な作業をせずに済む

「これはおかしい」と感じて、私は事業計画を作り込む前に、賃上げ要件の土台を洗い直しました。1年在籍の従業員がいない、役員報酬もゼロ。この組み合わせは、給与支給総額ゼロに直結する。念のため事務局にも確認を取り、この状態では申請できない、という結論を、申請作業に本格着手する前にはっきりさせました。

ここが、実務では決定的に重要だと考えています。もしこの罠に気づかないまま進んでいたら、どうなっていたか。何時間もかけて事業計画書を作り、必要書類を揃え、いざ申請という段階で「そもそも要件を満たしていない」と突き返される。費やした時間も労力も、まるごと無駄になっていたはずです。

補助金の支援で本当に価値があるのは、通る計画を書くこと以上に、「この事業者は、そもそもこの補助金の土俵に乗れるのか」を、いちばん最初に見極めることだと私は思っています。入り口で見抜けば、無駄な作業を回避し、別の補助金や、要件を満たすための準備期間の確保といった、次善の一手にすぐ切り替えられます。

だからこそ、最初に確認すべきこと

この経験から、改めて徹底しているチェックポイントがあります。特に、創業まもない企業を支援するときは、事業計画に入る前にここを必ず押さえます。

1年を通じて在籍している従業員がいるか。役員報酬を受け取っているか。この2つは、賃上げ要件の土台が成立するかを左右します。ここが崩れていると、どれだけ優れた事業計画を作っても、入り口で止まってしまいます。

そして、賃上げが加点なのか必須要件なのかは、補助を受ける金額帯によって変わります。「加点だから、なくても大丈夫」と決めつけず、その事業者の申請額ではどちらに該当するのかを、最初に確定させる。この一手間が、あとで効いてきます。

この罠が厄介なのは、真面目に創業して頑張っている事業者ほどはまりやすいことです。役員報酬をゼロにしてでも会社を守ろうとする——その健全な判断が、皮肉にも補助金の入り口を塞いでしまう。だからこそ、事前の見極めが本当に大切なのです。

デジタル化・AI導入補助金を検討している方へ

デジタル化・AI導入補助金は、ITツールやAIの導入を通じて中小企業の生産性を高める、心強い制度です。だからこそ、入り口の要件確認でつまずいてほしくありません。

補助対象の考え方、賃上げ要件の判定、そして採択後の実績報告・入金までの流れは、こちらのページで解説しています。申請を検討されている方、特に創業まもない事業者の方は、あわせてご覧ください。土俵に乗れるかどうかの見極めから、私がお手伝いします。

→ [デジタル化・AI導入補助金サポートページ]


※本記事は私の支援現場での実体験と、2026年時点のデジタル化・AI導入補助金の公表情報に基づいています。賃上げ要件の適用(加点か必須か)や給与支給総額の算定は、申請枠・補助金額・公募回によって異なります。実際の申請にあたっては、必ず最新の公募要領および事務局にご確認ください。

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