不採択案件 チャレンジ支援/着手金1万円・各先着5社

「YouTubeで会社紹介、補助金で作れますか?」友人の相談で見えた、持続化補助金の“3つの壁”

友人から、一本の相談が来ました。

「会社紹介の動画をYouTubeで作りたいんだけど、持続化補助金って使える?」

結論から言います。使えなくはない。でも、そのまま出したら、まず通りません。

しかも厄介なことに、この「通る/通らない」の線引きは、去年と今年で変わっています。動画とホームページという、いま一番ニーズが多い王道の組み合わせ。そこに潜む3つの壁と、僕が実際に事務局へ電話して掴んだ“今の答え”を、この記事で一つずつ解いていきます。

(この記事で言う補助金は「小規模事業者持続化補助金(一般型)」。以下、持続化補助金と呼びます)


目次

「販路拡大の補助金なんだから、いけるよね?」─友人からの、あの相談

その友人は、地域に根を張って商売をしている人です。派手ではないけれど、自分の街のために手を動かしているタイプ。そういう人からの相談だったので、僕も役に立ちたいと思いました。

彼の言い分は、こうです。

「持続化補助金って、販路拡大のための補助金でしょ?会社をもっと知ってもらうためにYouTubeで紹介動画を作る。これも販路拡大じゃん。いけるよね?」

理屈は分かります。販路拡大=もっと売れるようにすること。会社を知ってもらう=その入り口。だから動画もその一部だ、と。

僕も「いけなくはないよ」と返しました。でも、そのあとに「ただ、制限があるんだよね」と付け足した。この“ただ”の中身が、今日の本題です。

正直に言うと、この“ただ”を軽く見て申請してしまう人が、本当に多い。動画を撮って、業者に払って、いざ申請しようとしたら「その経費、対象になりません」。そういう相談を、僕は何度も受けてきました。だから、彼の動画の話を聞いた瞬間から、頭の中で3つの壁が見えていたんです。順番に崩していきます。


第一の壁:その動画、そもそも「広報費」じゃない

まず、多くの人がつまずくのがここです。

「動画を作る=広報でしょ?だったら広報費(宣伝・PRにかかる費用の区分)だよね」

そう思いますよね。僕も昔はそう思っていました。でも、持続化補助金の公募要領を読み込むと、動画の扱いはそんなに単純じゃない。

現在の公募要領には、こう書いてあります。

自社ホームページや、ECサイトにて使用する動画や写真の制作費用等については、③ウェブサイト関連費にて計上してください。

つまり、動画の“制作費”は、原則として広報費(②)ではなく、ウェブサイト関連費(③)に入る。HP(ホームページ)やEC(ネット通販)サイトで使う動画は、ここに計上しなさい、と国が言っているわけです。

ここで、友人の動画を思い出してください。彼が作りたいのは「YouTube単体で公開する会社紹介動画」でした。HPに埋め込むわけでも、ECサイトで流すわけでもない。

すると、どうなるか。

  • HP・ECで使う動画なら → ③ウェブサイト関連費、と条文で明示されている
  • でも、YouTube単体公開の動画は → 「HP・ECで使用する」という条文の言葉に、素直には当てはまらない

彼の動画は、いわば宙に浮くんです。「これは広報費なのか、ウェブサイト関連費なのか、それとも……」と。ここが第一の壁。撮りたい動画が、どの経費区分に入るのかすら、パッと決まらない。

言い換えれば、区分を確定させること自体が、もう専門家の仕事になっている。ここを曖昧にしたまま進めると、あとで「その計上、違います」と突き返される。

経費区分の早見表(動画・HP・チラシはどこに入る?)

混乱しやすいところなので、代表的なものを表にしました。

作りたいもの入る可能性のある区分ひとことメモ
HP・ECサイトに埋め込む動画③ウェブサイト関連費条文に明示。ここは分かりやすい
YouTube単体公開の会社紹介動画②広報費か③か、判断が要る使い方・目的しだいで揺れる。要確認
ホームページ本体の制作③ウェブサイト関連費定番。ただし後述の上限に注意
チラシ・パンフレットの制作・配布②広報費広報費の王道
看板・のぼり等(商品・サービスの広報)②広報費会社名だけのものは対象外になりうる

※区分は公募回や個別事情で変わります。最終判断は必ず最新の公募要領と事務局で確認してください。

この表を見て「思ったより動画って一筋縄じゃないんだな」と感じてもらえたなら、第一の壁は伝わっています。次はもっと本質的な壁です。


第二の壁:「会社紹介したい」だけでは、補助対象にならない

仮に、彼の動画を②広報費として計上する筋を考えてみます。すると、今度は目的の壁にぶつかります。

現在の公募要領には、広報費についてこう書かれています。

補助事業計画に基づく商品・サービスの広報を目的としたものが補助対象であり、単なる会社のPRや営業活動に活用される広報費は、補助対象外です。(例えば、販路開拓に繋がる商品・サービスの名称や宣伝文句および事業者名等が付記されていないもの)

記載があります。「単なる会社のPR」は、対象外。

ここで、彼の最初の言葉をもう一度。「会社紹介の動画を作りたい」。

……そう、彼の動機そのものが、この除外例に正面から当たってしまうんです。「うちの会社はこんな会社です、こんな想いでやっています」という会社紹介動画は、補助金の目から見ると「単なる会社のPR」に限りなく近い。販路開拓、つまり「どの商品・サービスがどう売れるようになるのか」が見えないからです。

ここが、この記事で一番伝えたいところです。

友人は「動画を作りたい」と言っている。でも補助金が問うているのは、その先です。「その動画で、あなたの何の商品が、どう売れるようになるんですか?」表面の“作りたい”と、補助金の“問い”のあいだには、深い溝がある。

そして、この溝を埋めるのが、専門家の“翻訳”だと僕は思っています。

「会社紹介がしたい」を、そのまま申請書に書いても通らない。それを「主力商品◯◯の魅力を伝え、新規顧客の来店・購入につなげるための広報」へと翻訳し直す。動画の中身も、会社の沿革を語るものから、商品・サービスの具体的な価値を見せるものへ設計し直す。ここまでやって、はじめて土俵に上がれる。

正直に言うと、この翻訳作業は、AIに丸投げできない部分です。その事業者が本当は何で食べているのか、どの商品に伸びしろがあるのか。そこは、話を聞いて、現場を想像して、一緒に考えるしかない。僕が「採択まで、ではなく入金まで」を掲げているのは、まさにこの泥臭い部分に価値があると信じているからです。

通る動画/通らない動画の考え方

通りにくい(単なる会社PR寄り)通りやすい(商品・サービスの広報)
「創業◯年、地域に愛されて…」という沿革紹介「新商品◯◯の使い方と魅力」を伝える動画
社長の想いを語るだけの動画特定サービスの申込み・来店につなげる動画
会社名・ロゴを見せるのが主目的商品名・宣伝文句が明確に入っている

“魂”は残していい。想いを込めるのは大事です。でも補助金に出すなら、その想いを「売れる商品の広報」という器に注ぎ直す必要がある。ここを外すと、どんなに良い動画でも落ちます。


第三の壁:広報費もウェブ制作費も、“単独では”申請できない

さて、区分を決めて、目的も翻訳した。これで安心……とはいきません。第三の壁があります。

持続化補助金では、広報費(②)も、ウェブサイト関連費(③)も、それ単独では申請できない。公募要領にも、こう明記されています。

○広報費のみによる申請はできません。必ず、ほかの経費と一緒に申請してください。

ウェブサイト関連費についても、同じく「これ単独での申請はできない」とされています。

つまり、「動画だけ」でも「ホームページだけ」でも申請できない。必ず“何かと抱き合わせ”にしないといけない。

ここで、友人との会話の実際の流れを再現します。

僕「動画は単独じゃ出せない。ホームページと組み合わせるのはどう?」
友人「ホームページも作りたいと思ってたんだよ。じゃあ動画(広報費)とHP(ウェブ制作費)の2つなら、いけるんじゃない?」

彼の頭の中では、これで解決したはずでした。2つの区分を組み合わせたんだから、単独申請の壁はクリアだ、と。

でも、ここに落とし穴があります。動画もHPも、使い方によっては両方“ウェブサイト関連費(③)”に寄るんです。もしそうなると、区分としては1つにまとまってしまい、「③だけ」の実質単独申請になりかねない。だから、本当に組み合わせが成立しているか、区分レベルで詰める必要がある。ここも、素人判断だと危ういポイントです。

上限にも、細かいルールがある

さらに、金額面のルールも押さえておきましょう(第18回・通常枠を基準にした一例です)。

項目内容
補助上限額(通常枠)50万円
補助率2/3(賃金引上げ特例の赤字事業者は3/4)
広報費(②)の上限30万円(税込)
ウェブサイト関連費(③)の上限30万円(税込)
相見積が必要になる基準発注総額50万円超(税込)で2者以上の相見積

※特例(インボイス特例+50万円、賃金引上げ特例+150万円)で上限は変動します。数値は公募回により変わるため、必ず最新の公募要領で確認してください。

ここで注意したいのが、ウェブサイト関連費(③)の上限です。この区分の上限は、以前は「交付申請額の1/4(最大50万円)」という計算式でした。それが今は、一律30万円(税込)に変わっています(この新旧の変化は、あとの章でもう一度取り上げます)。HPや動画にたっぷり使いたくても、③に回せるのは最大30万円まで。ここを知らずに「HP制作に40万円」なんて計画を立てると、あとで「30万円までしか対象になりません」となる。

さらに、ウェブサイトやシステムを50万円(税抜き)以上かけて作る場合は「処分制限財産」に該当します。ざっくり言うと、補助金でもらったものは自分の勝手には処分できない、というルールです。取得から通常5年間は、補助事業の目的外での使用・譲渡・廃棄などが制限される。しかも最近の公募要領では、無断で処分すると交付取消・返還命令(加算金付き)の対象になる、とはっきり書き込まれました。「もらって終わり」ではなく、そのあとも縛りが続く。ここも意外と見落とされがちです。


事務局に電話した。「今は、こうです」

ここまで来て、僕は判断に迷いました。条文を読むほど、グレーな部分が残る。特に「YouTube単体公開の動画をどう扱うか」は、要領の言葉だけでは断定しきれない。

こういうとき、僕は勝手に解釈しません。事務局に電話します。

受話器の向こうの担当者に、状況を説明しました。広報費とウェブサイト関連費、この2つの組み合わせで申請できるのか。返ってきた答えは、こうでした。

「現時点では、申請できます。ただし、変更になる可能性があるのでご注意ください。」

……これです。この一言に、補助金という制度の本質が詰まっている。

「できます」と言われて、ほっとした。友人に良い返事ができる、と。でも同時に、「ただし変更の可能性」という言葉が、ずっしり残りました。今日OKだったものが、次の公募回では変わっているかもしれない。担当者自身が、そう釘を刺してくる世界なんです。

僕が伝えたいのは、道が見えたという明るい話だけじゃありません。「今はいい。でも変わりうる」という不確実性ごと、持ち帰らないといけないということ。ここを正直に言わない専門家は、信用しないほうがいい。断定できないことは、断定できないと言う。それが誠実だと思っています。


去年と、変わっていた──過去と現在の公募要領を並べてみる

そして、実際に「変わっている」ことを、僕は条文レベルで確認しました。過去の公募要領と、今の公募要領を並べてみます。

過去の記載(動画について)

○ウェブや動画に関する広報費用については、③ウェブサイト関連費にて計上してください。
○街頭ビジョン広告やデジタルサイネージ広告など映像や動画を使用した屋外広告の掲載料については、②広報費に該当します。掲載する映像や動画の制作費については、③ウェブサイト関連費で計上してください。

現在の記載(広報費・動画について)

○広報費のみによる申請はできません。必ず、ほかの経費と一緒に申請してください。
○当経費の補助金交付申請額の上限は30万円(税込)です。
○補助事業計画に基づく商品・サービスの広報を目的としたものが補助対象であり、単なる会社のPRや営業活動に活用される広報費は、補助対象外です。
○自社ホームページや、ECサイトにて使用する動画や写真の制作費用等については、③ウェブサイト関連費にて計上してください。

動画と広報費だけではありません。ウェブサイト関連費(③)そのものも、変わっています。上限の考え方が、まるごと変わりました。

過去の記載(ウェブサイト関連費の上限)

○ウェブサイト関連費は、補助金交付申請額の1/4(最大50万円)が、当経費の申請額の上限です。

現在の記載(ウェブサイト関連費の上限)

○当経費の補助金交付申請額の上限は30万円(税込)です。

「交付申請額の1/4(最大50万円)」という計算式から、「一律30万円(税込)」へ。HPや動画に使える枠が、実質的に縮んだとも読めます。あわせて、処分制限財産のルールにも「システム」が明記され、無断処分すれば交付取消・返還命令(加算金付き)という罰則まで、はっきり書き込まれました。

並べると、違いがくっきり見えます。

新旧比較でわかる、4つの変化

論点過去現在
動画の計上先「ウェブや動画に関する広報費用」は③へ、と広めに拾う書き方「HP・ECで使用する動画・写真の制作費」は③へ、と使う場所を絞った書き方
広報費の目的縛り明確な除外例は目立たなかった「単なる会社のPR・営業活動」は対象外、と明記
広報費の上限─広報費のみの申請は不可/上限30万円(税込)を明記
ウェブサイト関連費の上限交付申請額の1/4(最大50万円)一律30万円(税込)。処分制限の罰則も明文化

一番大きいのは、上から2番目の「単なる会社のPR」を対象外だと言い切った点だと僕は見ています。

なぜ、こう変えたのか。ここからは僕の読みです。持続化補助金は「販路開拓」のための制度です。でも実際には、「とりあえず会社の宣伝に使いたい」という申請が相当あったはず。だから国は、目的を「商品・サービスの広報」へとぐっと絞り込んで、制度の趣旨を徹底させにきた。表面上は「文言の追加」ですが、その奥にあるのは**「販路開拓の補助金を、ちゃんと販路開拓に使わせる」という意思です。

友人の「会社紹介したい」が今つまずくのは、たまたまじゃない。制度が、まさにその手前で線を引き直したからなんです。


だから、僕は「随時チェック」を仕事にしている

友人の相談は、決して特殊な話じゃありません。むしろ、これからどんどん増える。

ホームページを持ちたい。動画で伝えたい。このニーズは、小さな事業者ほど強い。SNSも動画も当たり前になった今、「うちも動画くらい」と思うのは自然なことです。だからこそ、「持続化補助金で動画とHP、いけますか?」という質問は、これから山ほど出てくると思っています。

でも、ここまで見てきたとおり、答えは一筋縄じゃない。

  • 動画がどの区分に入るのか(第一の壁)
  • 「会社紹介」を「商品・サービスの広報」に翻訳できているか(第二の壁)
  • 単独申請にならない組み合わせになっているか、上限に収まっているか(第三の壁)

そして何より、この答え自体が、公募回ごとに変わる。去年の正解が、今年は不正解になる。事務局ですら「今はいいけど変わるかも」と言う世界です。

正直、これは面倒くさい世界です。毎回、最新の公募要領を読み直して、変わった点を拾って、事務局に確認して。AIに聞けば一発、とはいかない。むしろAIが古い情報を自信満々に答えてくる分、危ないくらいです。

でも、この“面倒くさい”をやり続けることに、専門家の価値があると僕は思っています。制度は生き物みたいに変わる。その変化を追いかけて、目の前の事業者に「今日時点の、あなたにとっての正解」を渡す。それは、去年のブログ記事にも、AIの学習データにも載っていない。

友人には、こう返しました。

「動画とHP、組み合わせればいけそうだよ。ただし“会社紹介”のままだと厳しいから、どの商品を売りたいか、そこから一緒に考えよう。あと、公募が変わるかもしれないから、直前にもう一回確認させて。」

彼は「そこまで見てくれるのか」と、少し驚いていました。でも、そこまで見るのが、たぶん僕の仕事なんです。撮りたい動画を、ちゃんと入金まで届ける。そのために、変わり続けるルールを、今日もひとつ読み直しています。


※本記事は執筆時点(小規模事業者持続化補助金 一般型 第18回・20回公募要領等)の情報に基づいています。補助金の要件・経費区分・上限額は公募回ごとに変更される可能性があります。実際の申請にあたっては、必ず最新の公募要領と管轄の商工会・商工会議所、事務局にご確認ください。動画・ホームページと補助金の組み合わせでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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